【社長の悩み解決】給与だけじゃない!社員のモチベーションを高める「トータル報酬」入門

「最近よく聞く『トータルリワード』って、一体何のことだろう?」
「ウチの会社でも、給料以外の方法で社員のやる気を引き出すことはできないかな?」
「社員にもっと魅力を感じてもらえる会社にしたいんだけど…」

こんな疑問や期待をお持ちの中小企業の経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。人材の獲得や定着がますます難しくなる現代において、社員が会社に求めるものは「給料の高さ」だけではなくなってきています。

そこで注目されているのが、「トータル報酬(トータルリワード)」という考え方です。これは、給与や賞与といった金銭的なものだけでなく、仕事のやりがい、成長の機会、働きやすい環境、福利厚生など、社員が会社から得られるあらゆる価値を総合的に捉え、魅力的なものにしていこうというアプローチです。

今回は、この「トータル報酬」という考え方の基本と、中小企業が社員のモチベーションを多角的に高めるために取り入れやすい具体的な要素について、分かりやすく解説していきます。


「トータル報酬」とは何か?なぜ注目されるのか?

「トータル報酬」とは、文字通り、社員が会社から受け取る報酬の「総体」を意味します。それは、大きく分けて以下の2つの要素から構成されると考えられています。

  1. 金銭的報酬: 給与、賞与(ボーナス)、各種手当、退職金、インセンティブ(成果報酬)、株式報酬など、直接的にお金として支払われるもの。
  2. 非金銭的報酬: 仕事そのものの面白さや達成感、成長できる機会、キャリアアップの可能性、良好な人間関係、働きやすい職場環境、充実した福利厚生、会社からの承認や賞賛、企業理念やブランドへの共感など、お金以外の価値を持つもの。

なぜ今、「トータル報酬」が注目されているのでしょうか?

  • 働き手の価値観の多様化: 以前にも増して、仕事に求めるものが「お金」だけでなく、「やりがい」「成長」「社会貢献」「ワークライフバランス」「良好な人間関係」など、人それぞれ多様化しています。
  • 人材獲得競争の激化: 少子高齢化による労働力人口の減少や、産業構造の変化により、優秀な人材の獲得競争はますます激しくなっています。その中で、給与以外の魅力を高めることが、他社との差別化につながります。
  • エンゲージメント向上の鍵: 社員が会社に対して愛着や貢献意欲(エンゲージメント)を持つためには、金銭的報酬だけでなく、非金銭的報酬が大きく影響すると言われています。エンゲージメントの高い社員は、生産性が高く、離職しにくい傾向があります。

【外部データ】社員が会社に求めるもの

  • 多くの民間調査機関が実施している「会社選びで重視する点」や「働きがいを感じる要素」に関するアンケートでは、「給与・待遇」と並んで、「仕事内容の面白さ」「良好な人間関係」「成長できる環境」「ワークライフバランスの実現」「福利厚生の充実」などが常に上位に挙げられています。

これらの背景から、企業は金銭的報酬だけでなく、非金銭的報酬も含めた「トータル報酬」全体で社員にアピールし、満足度を高めていく必要性が増しているのです。

社員の心を掴む!トータル報酬の4つの構成要素

では、具体的にどのような要素が「トータル報酬」を構成するのでしょうか? 代表的な4つのカテゴリーに分けて見ていきましょう。

1.魅力的な「報酬・評価(Compensation & Recognition)」

もちろん、生活の基盤となる金銭的報酬は重要です。そして、その頑張りが公正に評価され、報酬に結びついていると実感できることが大切です。

  • 公正で競争力のある給与水準: 同業他社や地域の水準を考慮し、社員の働きに見合う給与を設定します。
  • 貢献に応じたインセンティブ: 会社の業績や個人の成果に応じて支給される賞与や報奨金は、大きなモチベーションになります。
  • 透明性のある評価と昇給・昇格制度: 何をすれば評価され、昇給や昇格につながるのか、その基準やプロセスが明確で、社員に理解されていることが重要です。(前回の記事もご参照ください)
  • 承認・賞賛の文化: 金銭だけでなく、「ありがとう」「よくやったね」といった日々の言葉や、月間MVPなどの表彰制度も、社員の頑張りを認める大切な報酬です。

2.安心と充実の「福利厚生(Benefits)」

社員やその家族の生活を支え、安心して働ける環境を提供するための福利厚生も、重要なトータル報酬の一部です。

  • 法定福利の確実な提供: 健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険といった法定福利は、企業としての最低限の責任です。
  • 法定外福利の充実:
    • 健康支援: 定期健康診断(法定以上)、人間ドック補助、ストレスチェック、運動施設の利用補助、健康相談窓口など。
    • 生活支援: 住宅手当、家賃補助、育児・介護支援制度(法定以上の休暇、時短勤務、託児所費用補助など)、社員食堂、食事補助、慶弔見舞金、財形貯蓄制度など。
    • 自己啓発支援: 資格取得支援制度、研修費用補助、書籍購入補助など。
    • その他ユニークな制度: リフレッシュ休暇、誕生日休暇、ボランティア休暇、社内イベント、社員旅行など、自社らしさを出せるもの。 (PDF資料P.93の天彦工業様の「プレミアムフライデーに飲食代補助」なども、ユニークで魅力的な福利厚生の一例です)

3.やりがいと成長を実感できる「仕事・キャリア(Work & Career)」

日々の仕事そのものにやりがいを感じ、成長できる実感を持てることは、強力な非金銭的報酬となります。

  • 魅力的な仕事内容: 社会に貢献している実感、顧客からの感謝、自分のアイデアを活かせる、新しいことに挑戦できるなど、仕事の面白さや達成感を味わえること。
  • 裁量権と責任: ある程度の範囲で自分で判断し、仕事を進められる裁量権は、責任感とやりがいを引き出します。
  • 成長・学習の機会: OJT、研修、資格取得支援、メンター制度などを通じて、新しいスキルや知識を習得し、成長できる機会があること。
  • キャリアパスの提示: 将来どのような役割やポジションを目指せるのか、キャリアの道筋が見えることで、長期的な目標を持って働くことができます。
  • 適切なフィードバック: 上司から定期的に、自分の仕事ぶりに対する具体的で建設的なフィードバックを受けることで、成長の方向性を確認できます。

4.心理的安全と良好な「職場環境・人間関係(Work Environment & Culture)」

いくら給与が高くても、職場環境が悪ければ社員は定着しません。安心して自分らしく働ける環境は、トータル報酬の重要な土台です。

  • 心理的安全性の確保: 失敗を恐れずに意見を言えたり、新しいことに挑戦できたりする、風通しの良い職場であること。
  • 尊敬できる上司・信頼できる同僚: 良好なコミュニケーションが取れ、お互いに助け合い、高め合える人間関係があること。
  • 快適で安全なオフィス環境: 清潔で働きやすい物理的な環境、労働時間管理の徹底、ハラスメントのない職場づくりなど。
  • 柔軟な働き方の導入: テレワーク、フレックスタイム、時短勤務など、社員のライフスタイルに合わせた働き方が選択できること。
  • 経営理念やビジョンへの共感: 会社の目指す方向性や大切にしている価値観に共感できると、仕事への誇りや一体感が生まれます。

中小企業が「トータル報酬」を考える際のポイント

大企業のように潤沢な資金がなくても、中小企業ならではの工夫で「トータル報酬」の魅力を高めることは可能です。

  • まずは社員の声を聞く: アンケートや面談などを通じて、自社の社員が実際に何を求めているのか、何に不満を感じているのかを把握することから始めましょう。
  • すべてを網羅しようとしない: 最初から完璧を目指す必要はありません。自社の経営理念や強み、社員のニーズを踏まえ、最も効果的で、自社らしさを出せる部分から優先的に取り組みましょう。
  • 「制度」だけでなく「運用」と「コミュニケーション」が鍵: どんなに良い制度を作っても、それが社員に正しく理解され、公平に運用されなければ意味がありません。制度内容を丁寧に説明し、日頃から社員とコミュニケーションを取り、意見を聞きながら改善していく姿勢が大切です。
  • 「ないものねだり」ではなく「あるもの探し」: 自社にはどんな独自の魅力があるか(例:社長との距離が近い、地域貢献、アットホームな雰囲気など)を再発見し、それを磨き上げることも有効です。

まとめ:「働き続ける理由」を豊かにし、社員と会社の成長を

「トータル報酬」という考え方は、社員一人ひとりの「この会社で働き続けたい」という多様な理由を、金銭面だけでなく、やりがい、成長、環境といった様々な側面から豊かにしていくためのアプローチです。

それは、単に福利厚生を増やすことではありません。社員の声に耳を傾け、自社が提供できる価値を見つめ直し、それらを戦略的に組み合わせていくことが重要です。

給与も大切、でもそれだけじゃない。自社らしい「トータル報酬」の魅力で社員の心を掴み、社員と会社が共に成長していける、そんな関係性を目指してみてはいかがでしょうか。


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