あなたの会社は大丈夫? 安全性分析で「倒産リスク」をチェック!

利益が出ていても、会社は潰れる…?

「収益性分析」で自社の「稼ぐ力」を確認し、利益率の改善に取り組むことは非常に重要です。しかし、どんなに利益が出ていても、それだけで会社が安泰とは限りません。

  • 突然の売上減少で、仕入れ代金や給料が払えなくなったら?
  • 借入金の返済期限が迫っているのに、手元資金が足りなかったら?

いわゆる「黒字倒産」という言葉があるように、利益が出ていても資金繰りに行き詰まったり、債務超過に陥ったりして、事業継続が困難になるケースは少なくありません。会社の存続のためには、「稼ぐ力(収益性)」だけでなく、「支払い能力」や「財務的な体力(安全性)」も同時に見ていく必要があるのです。

そのための分析手法が「安全性分析」です。今回は、あなたの会社が短期的な支払いにも、長期的な環境変化にも耐えられる、”倒産しにくい”会社かどうかをチェックするための安全性分析について解説します。

安全性分析は、会社の「支払い能力」と「財務的な安定性」を測る生命線

「安全性分析」とは、主として貸借対照表(B/S)のデータを用いて、会社の短期的な支払い能力(流動性)と、長期的な支払い能力や財務的な安定性(健全性)を評価し、倒産リスクの度合いや財務的な抵抗力を測る分析手法です。

この分析を通じて、自社の財務的な弱点を早期に発見し、資金繰りの安定化や財務体質の強化といった対策を講じることで、不測の事態にも耐えうる”しぶとい”会社を作ることができます。

なぜ「安全性分析」が重要なのか? 会社の”守り”を固める視点

会社の安全性を分析することが、なぜ経営にとって重要なのでしょうか?

理由1:会社の「倒産リスク」を客観的に評価できるから

安全性分析の最大の目的は、倒産リスクを評価し、回避することです。特に、財務基盤が盤石とは言えない中小企業にとって、自社の財務的な安全性を常に把握しておくことは、経営者の最も重要な責務の一つと言えます。感覚的に「大丈夫だろう」ではなく、客観的な指標でリスクレベルを確認することが不可欠です。

理由2:短期的な「支払い能力(流動性)」をチェックできるから

まず重要なのが、短期的な支払い能力(=流動性)、つまり、日々の支払いや短期的な借入返済をきちんと行えるかどうかのチェックです。これが滞ると、会社の信用は失墜し、事業継続が困難になります。

  • 流動比率(=流動資産➗流動負債 x 100%):
    • 何がわかる?: 1年以内に現金化される見込みの資産(流動資産)で、1年以内に支払期限が来る負債(流動負債)をどれだけカバーできるかを示します。短期的な支払い能力の基本的な指標です。
    • 目安: 一般的に120%~150%以上あると安全性が高いとされます。100%を下回ると、短期的な資金繰りに懸念がある状態(自転車操業に陥りやすい)と言えます。
  • (補足) 当座比率(=当座資産➗流動負債 x 100%):
    • 何がわかる?: 流動資産の中でも、特に現金化しやすい資産(現金預金、受取手形、売掛金など。棚卸資産は除く)だけで、流動負債をどれだけカバーできるかを示します。流動比率よりも厳しいチェック指標です。
    • 目安: 100%以上あることが望ましいとされます。

これらの指標が低い場合は、売掛金の回収を早める、在庫を圧縮する、短期借入を長期に切り替えるなどの対策が必要になります。

理由3:長期的な「財務安定性(健全性)」を評価できるから

短期的な支払い能力だけでなく、長期的な視点での財務的な安定性(=健全性、ソルベンシー)も重要です。これは、会社が長期的な借入金の返済能力を持ち、経済環境の変化などにも耐えうるだけの体力があるかどうかを示します。

  • 自己資本比率(=純資産➗総資産 x 100%):
    • 何がわかる?: 会社の総資産(全財産)のうち、返済不要の自己資本(純資産)がどれだけの割合を占めるかを示します。会社の長期的な安全性を示す最も重要な指標の一つです。(B/S記事参照
    • 目安: 高ければ高いほど安全性が高く、一般的に中小企業では30%以上が望ましいとされます。業種にもよりますが、10%未満だと危険水域、マイナス(債務超過)は極めて危険な状態です。
  • (補足) 負債比率(=負債合計➗純資産 x 100%) 
    • 何がわかる?: 自己資本に対して、どれだけ借入金などの負債に頼っているかを示します。自己資本比率と表裏一体の指標で、この比率が低いほど安全性が高いと言えます。

自己資本比率が低い場合は、利益を蓄積して内部留保を増やす、増資を検討する、過大な借入を見直すなどの対策が必要です。

理由4:財務構造のバランスの歪みを把握できるから

安全性分析を行うことで、資産、負債、純資産のバランスが適切かどうかがわかります。例えば、自己資本比率が低く、借入金(特に短期借入金)への依存度が高いアンバランスな財務構造(=レバレッジが高い状態)は、金利上昇や売上減少時に、経営を急速に悪化させるリスクを孕んでいます。

理由5:金融機関からの「信用力」に直結するから

金融機関は、融資審査において安全性分析の指標(特に自己資本比率、流動比率など)を極めて重視します。これらの指標が良い会社は「返済能力が高く、倒産リスクが低い」と判断され、融資を受けやすくなり、金利などの条件面でも有利になる可能性があります。「利益は出ているが、安全性の指標が悪い」という会社は、融資を断られたり、厳しい条件を提示されたりすることがあります。

事例:安全性分析でリスクを回避したE社

E社は、急成長中のITベンチャー企業。売上も利益も急拡大していましたが、社長は常に資金繰りに追われている感覚がありました。

安全性分析を行ったところ、以下の点が明らかになりました。

  • 流動比率: 80%。売掛金の回収が遅れがちで、短期借入金で運転資金を賄っている状態。
  • 自己資本比率: 10%。急成長のための投資資金の大半を借入に頼ってきたため、自己資本が非常に薄い。

この結果に危機感を覚えた社長は、以下の対策を実行しました。

  1. 売掛金の早期回収を徹底し、回収サイトの短い取引を優先。
  2. 不急の投資を一部見送り、手元資金を確保。
  3. 利益計画を達成し、内部留保を積み増すことを最優先課題とする。
  4. (将来的に)増資による自己資本強化を検討。

これらの対策により、E社は徐々に流動比率と自己資本比率を改善。その後、市場環境が一時的に悪化した際も、以前より安定した資金繰りで乗り切ることができ、「あの時、安全性分析をして対策を打っておいて本当によかった」と社長は語りました。

安全性分析で”守り”を固め、持続可能な経営を!

安全性分析は、あなたの会社が短期的な支払い不能や長期的な経営危機に陥るリスクを評価し、会社の”守り”を固めるための重要な分析です。流動比率で日々の資金繰りの余裕度をチェックし、自己資本比率で長期的な財務基盤の安定性を確認しましょう。

収益性(攻め)と安全性(守り)は、経営の両輪です。どちらか一方だけでは、会社を持続的に成長させることはできません。定期的に安全性分析を行い、健全な財務体質を維持・強化していくことを心がけましょう。


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