あなたの会社の「稼ぐ力」はどれくらい? 収益性分析で利益率を徹底解剖!

利益額だけ見て、満足していませんか?

損益計算書(P/L)を見て、「今期も黒字だった、よかった!」と安心するのは、まだ早いかもしれません。利益の「額」が大きいことはもちろん重要ですが、それだけで会社の収益力を正しく評価することはできません。

例えば、1000万円の利益を出している会社Aと会社Bがあったとします。一見同じように見えますが、もし会社Aの売上が1億円(利益率10%)で、会社Bの売上が5億円(利益率2%)だったらどうでしょうか? 同じ利益額でも、売上から利益を生み出す「効率」には大きな差があることがわかります。

このように、会社の本当の「稼ぐ力」=「収益性」を測るためには、利益の額だけでなく、売上高に対する利益の割合、つまり「利益率」を分析する必要があります。これが「収益性分析」です。今回は、会社の収益性を測るための主要な指標とその見方について解説していきます。

収益性分析は、会社の「稼ぐ効率」を測り、利益改善の核心に迫る分析手法

「収益性分析」とは、主に損益計算書(P/L)のデータを用いて、売上高に対してどれだけ効率的に各段階の利益(売上総利益、営業利益、経常利益など)を生み出せているかを測る分析手法です。

この分析を通じて、自社の収益構造の強みや弱みを具体的に把握し、価格設定、コスト管理、事業運営の効率性など、利益改善に向けた的確なアクションプランを立てることが可能になります。

なぜ「収益性分析」が重要なのか? 利益率から読み解く経営のヒント

会社の収益性を分析することが、なぜ経営にとって重要なのでしょうか?

理由1:会社の「稼ぐ効率」を客観的に評価できるから

絶対額としての利益も重要ですが、収益性分析では「率」を見ることで、事業規模の大小に関わらず、「稼ぐ効率」を客観的に評価できます。売上が増えても利益率が低下していれば、収益性は悪化していると言えます。利益率を見ることで、売上の「量」だけでなく、経営の「質」を問うことができるのです。

理由2:利益が「どこで」削られているのか、ボトルネックを特定できるから

収益性分析では、P/Lの各段階の利益に対応する利益率を見ます。これにより、利益がどの段階で大きく目減りしているのか、つまり収益上のボトルネックがどこにあるのかを特定するのに役立ちます。

  • 売上総利益率/粗利率(=売上総利益➗売上高 x 100%):
    • 何がわかる?: 商品やサービスそのものの基本的な収益力(魅力、競争力)や、原価管理の巧拙を示します。
    • 低い場合: 商品の価格設定が低い、仕入れコストや製造原価が高い、などの可能性があります。
  • 営業利益率(=営業利益➗売上高 x 100%):
    • 何がわかる?: 本業での稼ぐ力を示します。販売活動や一般管理活動を含めた事業全体の効率性です。
    • 低い場合: 粗利率は高くても、人件費、広告宣伝費、家賃などの販売費及び一般管理費(販管費)がかかりすぎている可能性があります。
  • 売上高経常利益率(=経常利益➗売上高 x 100%):
    • 何がわかる?: 財務活動も含めた、会社全体の経常的な収益力を示します。中小企業にとって特に重要な指標の一つです。(前回のP/L記事参照
    • 低い場合: 営業利益率は高くても、借入金の支払利息負担が重いなど、財務的な要因が収益を圧迫している可能性があります。

これらの利益率を段階的に比較することで、「粗利は高いのに販管費で儲けが吹き飛んでいる」とか、「本業は順調だが財務コストが重い」といった、自社の収益構造の特徴と課題が明確になります。

理由3:「比較」によって自社の収益性レベルを判断できるから

これらの利益率は、比較することでその意味合いがより明確になります。

  • 時系列比較: 過去数年間の利益率の推移を見ることで、自社の収益性が改善傾向にあるのか、悪化傾向にあるのかを把握できます。
  • 同業他社比較(ベンチマーク): 業界平均や競合企業の利益率と比較することで、自社の収益性レベルが客観的にどの程度なのかを評価できます。「うちはこれくらいで普通」という思い込みが覆されることもあります。

比較を通じて、自社の目指すべき利益率水準や、改善の緊急度を判断する材料が得られます。

理由4:具体的な「利益改善策」の方向性を示してくれるから

収益性分析の結果は、具体的なアクションプランに繋がります。

  • 粗利率が低い → 価格戦略の見直し、原価低減努力(仕入先交渉、製造プロセス改善など)
  • 営業利益率が低い(販管費が原因)→ 経費削減(業務効率化による残業代削減、広告費用の見直し、家賃交渉など)
  • 経常利益率が低い(支払利息が原因)→ 借入金の借り換え検討、有利子負債の削減計画

分析によって課題の箇所が特定されるため、的外れな努力を避け、効果的な利益改善策に集中することができます。

事例:収益性分析で課題を発見、V字回復したD社

D社は、デザイン性の高い家具を製造・販売する会社。売上は伸びていましたが、利益は思ったほど増えず、社長は頭を悩ませていました。

そこで、収益性分析を実施。

  • 売上総利益率(粗利率): 業界平均よりも高い水準。デザイン性や品質が評価され、比較的高価格で販売できていることが確認できた(強み)。
  • 営業利益率: 業界平均を大きく下回っている。粗利率との差が大きいことから、販管費に問題があると推測。
  • 販管費の内訳分析: 売上高に対する広告宣伝費と物流費の比率が、同業他社に比べて著しく高いことが判明。

この結果を受け、D社は以下の対策を実施しました。

  1. 費用対効果の低い広告媒体への出稿を停止し、Webマーケティングに注力。
  2. 物流ルートや梱包方法を見直し、物流コストを削減。

これらの施策により、販管費が大幅に削減され、営業利益率が大きく改善。会社の収益性はV字回復しました。これは、収益性分析によって「販管費、特に広告宣伝費と物流費」という具体的な課題を特定できたからこその成果でした。

まとめ:利益率を分析し、「稼ぐ力」を磨き上げよう!

収益性分析は、あなたの会社の「稼ぐ効率」を測る健康診断です。売上総利益率、営業利益率、そして特に中小企業にとって重要な経常利益率といった指標を分析することで、自社の収益構造の強みと弱みを客観的に把握し、具体的な利益改善策へと繋げることができます。

利益の「額」だけでなく、「率」にも注目し、継続的に分析を行うこと。これが、厳しい競争環境の中で持続的に利益を生み出し、会社を成長させていくための鍵となります。


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