損益計算書(P/L)とは? 中小企業が見るべきはココ!「経常利益」で会社の本当の実力がわかる

あなたの会社、本当に「儲かって」いますか?

「今月も売上目標達成!」
「去年に比べて売上は確実に伸びている!」

日々の経営で「売上」を意識することは非常に重要です。しかし、売上が伸びていても、手元にお金が残っている実感がなかったり、なぜか資金繰りが楽にならなかったりすることはありませんか? もしかしたら、「本業はそこそこ順調なはずなのに、思ったほど利益が残らない…」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

その原因を探る鍵は、損益計算書(P/L: Profit and Loss Statement)に隠されている可能性が高いです。損益計算書は、単に税務署に提出するためだけの書類ではありません。一定期間(通常は1年間)に、あなたの会社が「どれだけ稼ぎ(収益)」「何に費用を使い」「最終的にいくら儲かったか(利益)」を示す、まさに会社の「成績表」なのです。

そして、この成績表の中でも、特に中小企業の経営者が注目すべき重要な指標があります。それが「経常利益」です。今回は、損益計算書の基本的な見方とともに、なぜ経常利益が重要なのかを深掘りしていきます。

損益計算書(P/L)は会社の「稼ぐ力」の成績表、特に「経常利益」が示す”普段の実力”が重要!

結論です。

損益計算書(P/L)は、あなたの会社が一定期間にどれだけの利益を生み出したかを示す経営に不可欠な財務諸表です。そして、その中でも「経常利益」は、財務活動(借入金の利息など)も含めた会社全体の”経常的な”稼ぐ力、つまり「普段の実力」を示す、中小企業にとって極めて重要な指標なのです。

経常利益を正しく理解し、それを改善していく視点を持つことが、持続可能な経営基盤を築く鍵となります。

なぜ損益計算書(P/L)、特に「経常利益」の理解が重要なのか?

損益計算書がなぜ経営にとって重要で、その中でも特に「経常利益」に注目すべき理由を5つのポイントで解説します。

ポイント1:「5つの利益」で儲けの構造を理解、”経常利益”の位置づけを知る

損益計算書には、段階的に計算される「5つの利益」があります。これらを順番に見ていくことで、会社の収益構造がわかりますが、それぞれの利益が持つ意味合いの違いを理解することが重要です。

  1. 売上総利益(粗利益)(=売上高ー売上原価)
    商品・サービスそのものの儲け。ここが低いと、価格設定や原価管理に課題がある可能性があります。
  2. 営業利益(=売上総利益ー販売費及び一般管理費)
    本業での稼ぐ力を示します。本業が順調かどうかを見る重要な指標です。
  3. 経常利益(営業利益+営業外収益ー営業費用): 
    ここが今回の最重要ポイントです! 経常利益は、本業の儲け(営業利益)に、預金利息や受取配当金などの「営業外収益」を加え、借入金の支払利息などの「営業外費用」を差し引いたものです。つまり、財務活動も含めた、会社全体の通常の事業活動から生み出される利益を示します。
    中小企業の多くは金融機関からの借入を活用しています。その借入金の利息負担が経営にどれだけ影響を与えているかが、この経常利益の段階で明確になります。「本業は儲かっている(営業利益は黒字)のに、借入金の返済負担(支払利息)が重くて、会社全体としては利益があまり残らない(経常利益が低い)」という状況は、この経常利益を見ることで初めて把握できるのです。
  4. 税引前当期純利益(経常利益+特別利益ー特別損失)
    経常利益に、固定資産売却益などの臨時的な利益(特別利益)や、災害損失などの臨時的な損失(特別損失)を加減算した、税金計算前の利益です。
  5. 当期純利益(税引前当期純利益ー法人税等)
    最終的に会社に残る利益(純粋な儲け)です。

営業利益で本業の調子を確認しつつ、経常利益で財務活動も含めた会社全体の「普段の実力」を把握する。この流れが重要です。

ポイント2:コスト構造を把握し、利益改善の糸口を探る

損益計算書は、利益だけでなく費用構造も明らかにします。「売上原価」や「販売費及び一般管理費」の内訳はもちろん、「営業外費用」の中身(特に支払利息)にも注目することで、コスト削減や財務改善のポイントが見えてきます。

例えば、経常利益が低い原因が支払利息の重さにあるなら、借入金の借り換えや返済計画の見直しといった財務戦略が必要になります。

ポイント3:会社の「総合的な収益力」を経常利益で測る【収益性の把握】

会社の収益性を測る指標として、「売上高経常利益率」(経常利益 ÷ 売上高)は特に重要視されます。これは、本業の収益力に加え、財務活動も含めた会社全体の総合的な収益力を示す指標だからです。 この経常利益率を時系列で見たり、同業他社と比較したりすることで、自社の「普段の実力」がどのレベルにあるのか、改善が必要なのかを客観的に判断できます。

ポイント4:業績トレンドから、経営の安定度を読み解く

単年度だけでなく、過去数年間の損益計算書を比較し、特に経常利益の推移を見ることで、会社の経営が安定しているか、財務負担が増えていないかといったトレンドを把握できます。 売上や営業利益が伸びていても、経常利益が伸び悩んでいたり、減少傾向にあったりする場合は、財務構造に問題を抱えている可能性があり、早期の対策が必要です。

ポイント5:財務戦略も含めた計画立案の基礎となる

経常利益を意識することで、単に「売上を伸ばす」「コストを削減する」だけでなく、「借入金をどうするか」「資金調達の方法をどうするか」といった財務戦略も含めた、より実現性の高い事業計画や利益計画を立てることができます。 損益分岐点分析を行う際も、目標とする利益を経常利益ベースで設定することで、支払利息などの固定費も考慮した、より現実的な売上目標を算出できます。

事例:経常利益に着目して財務改善に成功したB製作所

B製作所は、高い技術力で受注も多く、営業利益は安定して黒字でした。しかし、社長は「利益が出ているはずなのに、なぜか資金繰りが楽にならない」と悩んでいました。

そこで、顧問の専門家と一緒に損益計算書を詳細に分析。すると、営業利益は確かに黒字でしたが、過去の大型設備投資のために借り入れた複数の借入金の支払利息が大きく、経常利益を圧迫していることが判明しました。

この分析結果を受け、B製作所の社長は以下の対策を実行しました。

  1. 借入金の借り換え交渉: 金利の高い借入金を、より低利なものに一本化できないか金融機関と交渉。
  2. 遊休資産の売却: 使用頻度の低い古い機械を売却し、その資金を借入金の繰り上げ返済に充当。

これらの対策により、支払利息(営業外費用)が大幅に削減され、経常利益が大きく改善。資金繰りも安定し、社長は安心して本業に集中できるようになりました。これは、営業利益だけでなく、経常利益に着目したからこそできた改善策でした。

損益計算書(P/L)を読み解き、「経常利益」を伸ばす経営を目指そう!

損益計算書は、あなたの会社の経営状態を映し出す鏡です。そして、特に「経常利益」は、財務活動も含めた会社全体の「普段の実力」を示す、中小企業にとって非常に重要な指標です。

まずは自社の損益計算書で、営業利益と経常利益の差額(主に支払利息など)がどれくらいあるのかを確認し、その意味を考えてみてください。それが、自社の財務状況を把握し、より強い経営体質を築くための第一歩となります。


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