利益って本当は何? 中小企業経営者が知るべき「儲け」のその先にあるもの
「「利益」を後回しにしていませんか?
「今月も売上目標はクリアしたぞ!」「なんとか支払いは間に合った…」。
中小企業の経営者や個人事業主の皆様、そしてこれから事業を始めようとされている方々にとって、日々の売上確保や資金繰りは最優先事項かもしれません。特に創業期や、競合との価格競争が激しい状況では、「利益は二の次、まずは売上だ!」と考えてしまうこともあるでしょう。
しかし、「売上は上がっているのに、なぜか手元にお金が残らない」「忙しいばかりで、事業が成長している実感がない」と感じたことはありませんか?
その原因は、「利益」に対する意識の低さにあるのかもしれません。
利益を単なる「売上から経費を引いた残り」や「税金を計算するための数字」と捉え、その本質的な意味や重要性を見過ごしていると、知らず知らずのうちに会社の未来を危険に晒してしまう可能性があります。
今回は、なぜ利益がそれほどまでに重要なのか、その本当の意味を深掘りしていきます。
利益は会社の「血液」であり「未来を創るエンジン」です
結論を先にお伝えします。
利益とは、単なる「儲け」を示す数字ではありません。それは、あなたの事業を継続させ、成長軌道に乗せ、そして未来を切り拓くための不可欠な「血液」であり、「エンジン」そのもの
なのです。
利益の本質を理解し、それを意識的に確保していく経営こそが、変化の激しい現代で会社を存続させ、持続的な成長を実現するための絶対的な鍵となります。
なぜ利益が不可欠なのか? 事業における利益の5つの重要な役割
では、具体的に利益にはどのような役割があり、なぜそれほどまでに重要なのでしょうか? 主な5つの理由を見ていきましょう。
① 事業継続の「防波堤」となる【安定性の確保】
会社経営には、予期せぬ事態がつきものです。経済状況の悪化、主要取引先の倒産、自然災害、感染症の流行、急な仕入れ価格の高騰、設備の故障…。こうした不測の事態が発生したとき、会社を守る体力、つまり「内部留保(利益の蓄積)」がなければ、あっという間に経営は立ち行かなくなります。
赤字が続けば、当然ながら運転資金は底をつきます。利益を確保し、蓄積しておくことは、こうした万が一のリスクに対する「防波堤」を築くことなのです。利益は、会社の存続基盤そのものと言えます。
② 未来への成長を加速させる「投資エンジン」【成長性の源泉】
事業を成長させるためには、現状維持ではいけません。
- 新しい技術や設備の導入による生産性向上
- 優秀な人材の採用と育成
- 新商品・新サービスの開発(R&D)
- 販路拡大のためのマーケティング活動や広告宣伝
- 時代の変化に対応するためのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進
これらの未来への投資は、企業の成長に不可欠です。その原資となるのが、まさに利益です。金融機関からの借入も一つの手段ですが、自己資金(利益の蓄積)がなければ、リスクを取った大胆な投資は難しくなります。利益は、会社を成長に導き未来を切り拓くための「ガソリン」なのです。
③ 社会的な「信用力」を高める【信頼の証】
利益は、会社の「信用力」を測る重要な指標です。 金融機関は融資審査の際、企業の収益性、つまり利益を厳しくチェックします。安定的に利益を出している企業は、「返済能力が高い」「経営が安定している」と判断され、有利な条件での融資や、必要なタイミングでの資金調達がしやすくなります。
また、継続的に利益を上げているという事実は、取引先や顧客からの信頼にも繋がります。「この会社は大丈夫そうだ」「長く付き合えそうだ」という安心感を与えることができるのです。これは、ビジネスチャンスの拡大にも寄与します。
特にスタートアップ企業が投資家から資金調達を目指す場合、将来の収益性(利益を生み出す力)を示すことが極めて重要になります。
④ 関わる人々への「還元」を可能にする【貢献の源泉】
利益は、会社を支える人々への「還元」の源でもあります。
- 従業員へ: 昇給、賞与(ボーナス)、福利厚生の充実といった形で還元することで、従業員のモチベーションを高め、定着率を向上させ、より優秀な人材の確保につながります。
- 経営者自身へ: 特に個人事業主や中小企業のオーナー経営者にとって、利益は生活の糧であり、事業リスクを取ったことへの正当な報酬となります。
- 株主へ: (株式会社の場合)配当という形で利益を還元します。
- 社会へ: 納税を通じて、国や地方自治体の財源となり、社会インフラや公共サービスの維持に貢献します。これも企業の重要な社会的責任です。
利益なくして、これらの還元は不可能です。
⑤ 経営状態を映し出す「健康診断」の指標【経営判断の羅針盤】
利益、特に「営業利益」(本業で稼いだ利益)は、あなたのビジネスモデルが健全で、効率的に運営されているかを示す重要なバロメーターです。
売上高が大きくても、コストがかかりすぎて営業利益が少なければ、それは「忙しいだけで儲かっていない」状態かもしれません。価格設定、仕入れ、製造プロセス、販売管理費など、どこかに改善点があるはずです。
損益計算書(P/L)には、売上総利益(粗利)、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益といった段階的な利益が表示されます。それぞれの利益が何を示しているのかを理解し、その推移を分析することで、自社の強み・弱みを客観的に把握し、的確な経営判断を下すための「羅針盤」とすることができます。
事例:利益を意識する会社、しない会社の違い
利益に対する意識の違いが、企業の将来にどのような差を生むのか、具体的な例で見てみましょう。
- A社(売上至上主義、利益は二の次): A社は、競合に対抗するため、常に値引きセールで売上を確保していました。売上は伸びているものの、利益率は低いまま。そんな中、原材料費が世界的に高騰。値引き体質から抜け出せず、顧客への価格転嫁もできずに赤字寸前に。利益がないため、古くなった機械の更新もできず、生産効率は悪化の一途。従業員の給与も据え置きで、優秀な社員が次々と辞めていきました。さらに、業績悪化を理由に銀行からの追加融資も断られ、資金繰りは火の車。目先の売上はあっても、事業継続そのものが危うい状況です。
- B社(利益を重視し、未来へ投資): B社は、安易な値引きに走らず、独自の技術を活かした高付加価値商品を提供。同時に、無駄なコストの削減にも継続的に取り組み、高い利益率を確保していました。コロナ禍で一時的に売上が落ち込んだ際も、蓄積された利益(内部留保)があったため、人員削減することなく乗り切りました。むしろ、その利益を原資に、将来を見据えてオンライン販売システムを強化し、新たな顧客層の獲得に成功。利益が出ているため、従業員には決算賞与を支給し、社内の士気は非常に高い状態です。安定した財務基盤と成長性が評価され、金融機関からも低利での設備投資資金の提案を受けています。
この二社の違いは明らかです。利益を軽視した経営がいかに脆いか、そして利益を重視し、それを活用する経営がいかに強いか、ご理解いただけたかと思います。
「儲け」の先にある、利益の本当の価値
改めて、今回の結論を繰り返します。利益は、単なる決算書の数字ではありません。それはあなたの会社を守り、成長させ、関わる人々を豊かにし、そして社会に貢献するための、かけがえのない源泉なのです。
利益の本当の意味を理解し、それを追求する経営を行うことは、経営者自身の夢の実現や、会社を次世代に繋いでいくという目標達成にも直結します。
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