貸借対照表(B/S)とは?会社の「財産」と「借金」が一目でわかる!安全性を見抜くポイント

会社の「健康状態」、ちゃんと把握していますか?

前回の記事では、会社の「儲け」がわかる損益計算書(P/L)について解説しました。しかし、儲けが出ていても、「なぜか資金繰りが苦しい」「借入金の返済が心配」といった悩みを抱えている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

その答えは、もう一つの重要な財務諸表である貸借対照表(B/S: Balance Sheet)にあるかもしれません。貸借対照表は、会社の特定の日(通常は決算日)時点での「財政状態」、つまり、会社が「何を持っているか(資産)」と、その資産を「どのように調達したか(負債・純資産)」を一覧で示す書類です。

「資産とか負債とか、難しそうでよくわからない…」と感じる方もご安心ください。貸借対照表は、あなたの会社の「健康診断書」のようなもの。その見方を理解すれば、会社の財務的な体力や安定性(安全性)を客観的に把握し、将来のリスクに備えることができるようになります。損益計算書(P/L)と合わせて見ることで、会社の全体像がより明確に見えてくるのです。

貸借対照表(B/S)は、会社の「財務的な体力・安全性」を示す”スナップショット”

貸借対照表(B/S)は、決算日時点での会社の財産(資産)、借金(負債)、そして自己資本(純資産)の状況を明らかにし、会社の財務的な安定性や支払い能力(安全性)を評価するための極めて重要な財務諸表です。

この「スナップショット」を読み解くことで、あなたの会社が財務的に健全な状態にあるのか、どのような課題を抱えているのかを把握し、的確な経営判断や財務戦略に繋げることができます。

なぜ貸借対照表(B/S)の理解が重要なのか? 経営に活かす5つのポイント

貸借対照表がなぜ経営にとって重要なのか、具体的なポイントを5つご紹介します。

ポイント1:「資産=負債+純資産」のバランスで会社の基本構造がわかる【基本構造の理解】

貸借対照表は、左右に分かれており、左側(借方)に「資産」、右側(貸方)に「負債」と「純資産」が記載され、必ず左右の合計金額が一致(バランス)します。

  • 資産(左側): 会社が保有する財産や権利。資金が「何に使われているか」を示します。
    • 流動資産:現金、預金、売掛金、棚卸資産(在庫)など、1年以内に現金化される見込みの資産。
    • 固定資産:土地、建物、機械設備、長期保有の株式など、長期間にわたって使用・保有される資産。
  • 負債(右側上部): 返済義務のある他人資本。いわゆる「借金」です。資金を「どのように調達したか(他人から)」を示します。
    • 流動負債:買掛金、短期借入金、未払金など、1年以内に返済・支払い期限が来る負債。
    • 固定負債:長期借入金、社債など、返済・支払い期限が1年を超える負債。
  • 純資産(右側下部): 返済義務のない自己資本。株主からの出資金(資本金)や、過去の利益の蓄積(利益剰余金)などです。資金を「どのように調達したか(自分自身で)」を示します。

この「資産 = 負債 + 純資産」というバランスを見ることで、会社がどのような財産を持ち、その資金を他人からの借入で賄っているのか、それとも自己資金で賄っているのか、その基本的な財務構造が一目でわかります。

ポイント2:会社の「安全性(倒産しにくさ)」がわかる【安全性分析の基礎】

貸借対照表は、会社の安全性(財務的な安定性や支払い能力)を評価するための重要な情報源です。特に重要なのが、「純資産」の割合です。

  • 自己資本比率(純資産 ÷ 総資産 × 100%): 総資産のうち、返済不要の自己資本(純資産)がどれくらいの割合を占めるかを示す指標です。この比率が高いほど、借入への依存度が低く、財務的に安定しており、倒産しにくい会社と評価されます。中小企業の場合、業種にもよりますが、一般的には35%以上で良好、50%以上で優良であると言われています(=安全性が高い)。逆に、この比率が低い、あるいはマイナス(債務超過)の場合は、財務的に非常に不安定な状態であり、早急な対策が必要です。

金融機関が融資審査で最も重視する指標の一つであり、この比率が高いと、融資を受けやすくなる傾向があります。

ポイント3:会社の「支払い能力(短期的な安全性)」がわかる【流動性分析】

安全性の中でも、特に短期的な支払い能力(資金繰りの余裕度)を見ることも重要です。これには、流動資産と流動負債のバランスを見ます。

  • 流動比率(流動資産 ÷ 流動負債 × 100%): 1年以内に現金化される見込みの資産(流動資産)が、1年以内に返済が必要な負債(流動負債)をどれだけ上回っているかを示す指標です。この比率が高いほど、短期的な支払い能力が高く、資金繰りに余裕があるとされます。一般的には120%~150%以上あると望ましい(200%以上なら優良)と言われますが、業種によって目安は異なります。

流動比率が100%を下回っている(流動資産より流動負債が多い)状態は、短期的な資金繰りが厳しい可能性を示唆しており、注意が必要です。

ポイント4:資産の効率的な活用度合いが見える【効率性分析の示唆】

貸借対照表の「資産」の内訳を見ることで、資金がどのように使われているかがわかります。例えば、

  • 売掛金が過剰に多くないか?(回収は滞っていないか?)
  • 棚卸資産(在庫)が過剰に多くないか?(不良在庫を抱えていないか?)
  • 使われていない固定資産(遊休資産)がないか?

これらの資産が過剰になると、資金繰りを圧迫したり、収益性を低下させたりする原因となります。資産が効率的に事業活動に使われているかをチェックする視点も重要です。

ポイント5: P/L(儲け)と合わせて会社の全体像を把握できる【財務諸表連関の理解】

損益計算書(P/L)が一定期間の「フロー(儲けの流れ)」を示すのに対し、貸借対照表(B/S)は特定時点の「ストック(財産の状態)」を示します。 P/Lで生み出された利益(当期純利益)は、B/Sの純資産の部にある「利益剰余金」として蓄積されていきます。つまり、P/Lでの儲けが、B/Sの自己資本を厚くし、会社の安全性を高めていく、という繋がりがあります。

P/LとB/Sの両方を理解し、連動して見ることによって、初めて会社の経営状態を立体的に把握することができるのです。

事例:貸借対照表(B/S)からわかる、A社とB社の違い

同じくらいの売上規模の会社でも、B/Sを見るとその「体力」には大きな差があることがあります。

  • A社(B/Sが弱い): 総資産は大きいものの、その多くが借入金(負債)で賄われており、純資産はわずか。自己資本比率は10%と低い状態。さらに、流動資産よりも流動負債が多く、流動比率も80%しかない。 ⇒ この会社は、売上が少し落ち込んだり、予期せぬ出費があったりすると、すぐに資金繰りに窮し、借入金の返済も困難になるリスクが高い(安全性が低い)。見た目の規模はあっても、財務的には不安定。
  • B社(B/Sが強い): A社と同じ総資産規模だが、長年の利益の蓄積(利益剰余金)により純資産が厚く、自己資本比率は50%と高い。流動資産も流動負債を大きく上回っており、流動比率は200%。 ⇒ この会社は、借入への依存度が低く、短期的な支払い能力も十分にあるため、経営環境の変化にも耐えうる体力がある(安全性が高い)。財務的に安定しており、将来への投資余力もある。

あなたの会社のB/Sは、A社とB社のどちらに近いでしょうか?

貸借対照表(B/S)を理解し、”強い財務体質”を目指そう!

貸借対照表(B/S)は、あなたの会社の決算日時点での「健康状態」を映し出す重要なレポートです。資産、負債、純資産のバランスを見ることで、会社の財務的な体力や安全性を客観的に把握することができます。

損益計算書(P/L)でしっかり利益を出し、それを貸借対照表(B/S)の純資産として蓄積していくこと。これが、外部環境の変化に強く、持続的に成長していける「強い財務体質」を築く基本です。


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